社用車を使う会社なら、「誰が、いつ、どの車を、どんなルールで運転するのか」を決めておく必要があります。そのルールを文書にまとめたものが車両管理規程(社用車管理規程)です。
「社用車が増えてきたので、そろそろルールを作りたい」「アルコールチェックが義務になったと聞いたけれど、規程に何を書けばいいのかわからない」「社員が社用車を私用に使っていないか心配」という総務・管理部門の方も多いのではないでしょうか。社用車で事故が起きると、運転した本人だけでなく、会社も損害賠償の責任を問われることがあります。
この記事では、車両管理規程の目的と法的な背景を押さえたうえで、規程に記載すべき12項目、ひな形の章立てと作り方の手順、社用車の私用やマイカーの業務使用の扱い、違反したときの罰則の決め方までをまとめて解説します。後半では、役員車や運転手付きの社用車で規程に書き足したいポイントも紹介します(2026年10月時点の情報です)。
- これから車両管理規程(社用車管理規程)を作る総務・管理部門の方
- 既存の規程がアルコールチェック義務化などの法改正に追いついているか確認したい方
- 社用車の私用やマイカーの業務使用をどこまで認めるか迷っている方
- 役員車・運転手付きの社用車の管理ルールを整えたい方
このような方は、ぜひ参考にしてください。
車両管理規程とは?社用車のルールを定める目的
車両管理規程とは、会社が保有・使用する車両の管理方法と、運転する従業員が守るべきルールを定めた社内規程です。事故を防ぎ、万一の事故のときに会社と従業員の責任範囲をはっきりさせることが大きな目的です。
社用車のルールがあいまいなままだと、「誰が運転したのかわからない」「車検が切れていた」「私用中に事故を起こされた」といったトラブルが起きやすくなります。まずは、規程の位置づけと、会社が負う法的な責任から確認しましょう。
車両管理規程と就業規則・車両管理台帳の違い
結論からいうと、就業規則は「働くうえでのルール全般」、車両管理規程は「車に関するルールの詳細」、車両管理台帳は「車の情報を記録する帳簿」です。役割が違うので、3つをセットで整えるのが基本です。
| 名称 | 位置づけ | 主な内容 | 作成・届出 |
|---|---|---|---|
| 就業規則 | 労働条件・服務規律の基本ルール | 労働時間、賃金、服務規律、懲戒の種類と事由など | 常時10人以上の事業場は作成と労働基準監督署への届出が義務 |
| 車両管理規程 | 就業規則の付属規程(細則) | 社用車の使用手続き、運転者の条件、点検、事故対応、私用の制限など | 法律上の作成義務はない(会社の任意) |
| 車両管理台帳 | 規程にもとづいて作る記録簿 | 車両ごとの登録番号、車検・保険の期限、点検・修理の履歴など | 作成義務はないが、管理の実務では必須 |
就業規則には、労働基準法で定められた事項(労働時間や賃金、退職など)を必ず書く必要があります。一方、車両管理規程は法律で作成が義務づけられた書類ではありません。ただし、規程の違反を理由に懲戒処分をするには、懲戒の種類と事由が就業規則に書かれていることが前提になります。そのため、車両管理規程は「就業規則の付属規程」として位置づけ、就業規則の側に「車両の管理については別に定める車両管理規程による」と1文入れておくのが一般的です。
車両管理台帳は、規程そのものではなく、規程を運用するための記録です。規程に「車両管理責任者は車両管理台帳を作成し、常に最新の状態に保つ」と書いておくことで、誰が台帳を管理するのかがはっきりします。
会社が負う使用者責任(民法715条)と運行供用者責任
社用車で従業員が事故を起こしたとき、会社が負う可能性のある責任は主に2つです。民法第715条の使用者責任と、自動車損害賠償保障法(自賠法)第3条の運行供用者責任です。
| 責任の種類 | 根拠 | 会社が責任を負う場面 | 会社が免れるのが難しい理由 |
|---|---|---|---|
| 使用者責任 | 民法715条 | 従業員が「事業の執行について」第三者に損害を与えたとき(物損も人身も対象) | 業務中の事故であれば、監督に問題がなかったと証明するのは実務上ほぼ困難 |
| 運行供用者責任 | 自賠法3条 | 会社が車の運行を支配し、運行による利益を得ているときの人身事故 | 会社側が「注意を怠らなかった」など3つの条件をすべて証明しない限り責任を負う |
使用者責任は、従業員の行為が外から見て業務の範囲内に見えれば成立するとされています。運行供用者責任は人身事故に限られますが、車の所有者が会社であれば、私用中の事故でも責任を問われることがあります。社用車の鍵の管理がずさんで、従業員が勝手に持ち出せる状態だった場合などが典型です。
つまり、社用車の事故は「運転した従業員の問題」では済まず、会社自身が損害賠償の当事者になりうるということです。車両管理規程は、こうした事故を防ぎ、責任の範囲を事前に決めておくための土台になります。
安全運転管理者の選任とアルコールチェックの義務
一定の台数以上の自動車を使う事業所は、道路交通法第74条の3にもとづき、安全運転管理者を選任しなければなりません。白ナンバー(自家用)の社用車も対象です。
| 選任が必要な事業所 | 乗車定員11人以上の自動車を1台以上、またはその他の自動車を5台以上使用する事業所(自動二輪車は1台を0.5台で計算) |
|---|---|
| 副安全運転管理者 | 自動車20台以上で1人、以後20台ごとに1人を追加 |
| 安全運転管理者の要件 | 20歳以上(副安全運転管理者を置く場合は30歳以上)で、運転管理の実務経験2年以上など |
| 届出 | 選任した日から15日以内に、事業所を管轄する警察署を経由して公安委員会へ届け出る |
| 法定講習 | 選任後は毎年、公安委員会が行う講習を受講する |
| 罰則 | 選任義務違反は50万円以下の罰金(法人も対象)、届出義務違反は5万円以下の罰金 |
安全運転管理者の業務には、運転者の状況把握や運行計画の作成、運転日誌の備え付けなどがあります。2022年4月からは運転前後の酒気帯びの有無の目視等による確認と、その記録の1年間保存が加わり、2023年12月からはアルコール検知器を使った確認と、検知器を常に有効に使える状態に保つことも義務になりました。制度の概要は警察庁の安全運転管理者制度のページで確認できます。
車両管理規程にも、安全運転管理者の選任と業務、アルコールチェックの手順と記録の方法を書き込んでおくことが大切です。法律で義務になっている業務を、社内の誰が、どの手順で行うのかを規程で決めておけば、担当者が替わっても運用が途切れません。
車両管理規程の対象になる車両と運転者
規程を作るときに最初に決めるのが「どの車に」「誰に」適用するのかという範囲です。ここがあいまいだと、マイカーやレンタカーで事故が起きたときに「規程の対象外だった」という抜け穴になります。
| 車両の種類 | 所有者 | 規程での扱い | 特に注意したい点 |
|---|---|---|---|
| 自社所有の社用車 | 会社 | 規程の中心的な対象 | 車検・保険・点検の管理を会社が直接行う |
| リース車両 | リース会社(使用者は会社) | 自社所有車と同じく規程の対象 | リース契約の走行距離制限・原状回復の条件 |
| 業務で使うマイカー | 従業員 | 許可制にして規程の対象に含める | 任意保険の補償内容・費用精算 |
| レンタカー・カーシェア | レンタカー会社等 | 業務利用時は規程の対象に含める | 保険・免責補償の範囲、借りた人の名義 |
社用車(自社所有・リース車両)
会社が所有する車だけでなく、リース車両も規程の対象に含めるのが基本です。リース車両は車検証上の所有者がリース会社でも、使用者は会社です。日々の運行を管理しているのも会社なので、事故が起きれば会社が責任を問われる点は自社所有の車と変わりません。
リース車両の場合は、規程とは別にリース契約の内容も確認しておきましょう。たとえば、契約で決められた走行距離を超えると精算金がかかる、返却時に傷やへこみがあると原状回復費用がかかる、といった条件です。規程に「リース車両は、リース契約の定めにも従って使用する」と1文入れておくと、運転者に契約上の注意点を伝えやすくなります。
営業車・配送車・役員車など用途ごとに台数が多い会社では、車両管理台帳に用途の区分を設けておくと、どの車にどのルールが当てはまるのかを整理しやすくなります。
業務で使うマイカー
従業員のマイカーを業務に使わせることがある会社は、マイカーも規程の対象に含めておく必要があります。マイカーでの外回りや出張中の移動は「事業の執行」にあたるため、事故が起きれば会社が使用者責任を問われる可能性があるからです。
規程では「マイカーの業務使用は原則禁止。ただし会社が許可した場合に限り認める」とし、許可の条件(任意保険の補償内容など)を細かく定める形が一般的です。マイカーを業務に使わせるときの具体的なルールは、後ほど詳しく解説します。
なお、マイカー通勤だけを認めている会社でも、通勤途中に取引先へ立ち寄らせるなど業務に使わせている実態があると、会社の責任が問われやすくなります。「通勤は認めるが、業務には使わせない」のであれば、その線引きも規程に明記しておきましょう。
レンタカー・カーシェア
出張先でのレンタカーや、都市部でのカーシェアを業務で使う会社も増えています。これらも、業務で使う以上は規程の対象に含めておきましょう。
特に決めておきたいのは、誰の名義で借りるのか、保険や免責補償をどこまで付けるのか、費用をどう精算するのかの3点です。従業員個人の名義で借りると、事故のときに個人の保険や補償で処理することになりかねません。法人契約のカーシェアや、法人名義でのレンタカー予約を原則にすると、管理しやすくなります。
また、レンタカーを使う出張でもアルコールチェックが必要かどうかは、その従業員が所属する事業所が安全運転管理者の選任事業所かどうかで判断します。対象事業所の従業員であれば、出張先でも携帯型のアルコール検知器を使い、電話やビデオ通話で確認・記録する手順を決めておくと安心です。
運転を許可する従業員の範囲
「社用車は誰でも運転してよい」という運用は危険です。規程では、会社が認めた従業員だけが運転できる「運転者登録制(許可制)」にしておくのがおすすめです。
- 有効な運転免許を持ち、運転経験が一定期間以上ある(例:免許取得後1年以上)
- 直近の一定期間に重大な違反や事故がない
- 会社が実施する安全運転研修を受講している
- 運転者台帳に登録され、免許証の写しを提出している
新入社員や免許を取ったばかりの人、パート・アルバイト、出向者など、雇用形態によって運転を認めるかどうかを分ける会社もあります。また、任意保険の「運転者の範囲」や「年齢条件」と、規程で運転を認める範囲がずれていないかも必ず確認しましょう。保険の年齢条件を「30歳以上補償」にしているのに、20代の社員に運転させてしまうと、事故のときに保険金が支払われないおそれがあります。
車両管理規程に記載すべき12項目
ここからは、車両管理規程に盛り込みたい12の項目を順番に解説します。すべての会社に共通する基本の項目なので、自社の規程を作るときや、既存の規程を見直すときのチェックリストとして使ってください。
- ①目的と用語の定義
- ②管理体制と車両管理責任者
- ③安全運転管理者の選任
- ④社用車の使用申請と許可
- ⑤運転者の条件と運転者台帳
- ⑥車両管理台帳と運行記録
- ⑦点検・整備と車検の管理
- ⑧保険の加入条件
- ⑨安全運転の確保とアルコールチェック
- ⑩事故発生時の報告と対応
- ⑪私的使用・マイカー使用の制限
- ⑫損害賠償と違反時の懲戒
| 項目 | 主な記載内容 | 特に重要な理由 |
|---|---|---|
| ①目的と用語の定義 | 規程の目的、「車両」「運転者」などの定義 | 適用範囲の抜け漏れを防ぐ |
| ②管理体制 | 車両管理責任者・担当部署の役割 | 管理の責任者を明確にする |
| ③安全運転管理者 | 選任・業務・権限 | 法律上の義務への対応 |
| ④使用申請と許可 | 申請方法、許可する人、使用目的 | 無断使用・私用を防ぐ |
| ⑤運転者の条件 | 運転を許可する条件、運転者台帳 | 保険の運転者範囲と一致させる |
| ⑥車両管理台帳・運行記録 | 台帳の項目、運転日報の記入 | 誰がいつ使ったかを記録に残す |
| ⑦点検・整備・車検 | 日常点検、定期点検、車検の管理 | 整備不良による事故を防ぐ |
| ⑧保険 | 自賠責・任意保険の補償内容 | 事故時の補償不足を防ぐ |
| ⑨安全運転・アルコールチェック | 交通法規の遵守、酒気帯び確認の手順 | 法律上の義務への対応 |
| ⑩事故対応 | 事故直後の行動、報告の流れ | 初動の遅れを防ぐ |
| ⑪私的使用・マイカー | 私用の禁止・例外、マイカーの許可制 | 会社の責任範囲を限定する |
| ⑫損害賠償・懲戒 | 従業員への求償、違反時の処分 | 規程の実効性を高める |
①目的と用語の定義
第1条には規程の目的を書きます。たとえば「この規程は、会社が業務に使用する車両の管理および運行に関する事項を定め、交通事故の防止と車両の適正な管理を図ることを目的とする」といった書き方です。目的条項は短くても構いませんが、省略しないことが大切です。規程の解釈に迷ったときの判断基準になるからです。
続く第2条で用語を定義します。最低限決めておきたいのは次の3つです。
- 車両:会社が所有・リースする自動車に加え、業務で使用を許可したマイカー、レンタカー・カーシェアを含むか
- 運転者:会社が運転を許可し、運転者台帳に登録した者
- 業務使用:会社の指示または許可にもとづく移動(通勤を含むかどうかも明記)
「車両」の定義にマイカーやレンタカーを含めておかないと、後の条文が適用されない抜け穴になります。適用範囲は、先ほどの対象車両の整理にあわせて決めましょう。
②管理体制と車両管理責任者
次に、誰が社用車を管理するのかを決めます。総務部長などを車両管理責任者とし、その下に拠点ごとの車両管理担当者を置く体制が一般的です。
| 車両管理責任者 | 規程全体の運用、車両の購入・リース・廃車の判断、事故時の対応の統括 |
|---|---|
| 車両管理担当者(拠点ごと) | 鍵の管理、使用予約の受付、車両管理台帳の更新、点検の実施状況の確認 |
| 安全運転管理者 | 運転者の状況把握、アルコールチェック、運転日誌の管理、安全運転の指導 |
| 運転者 | 日常点検、運転日報の記入、事故・違反の報告 |
車両管理責任者と安全運転管理者を同じ人が兼ねることもできます。ただし、拠点が複数ある会社では、安全運転管理者は事業所ごとに選任する必要がある点に注意しましょう。担当者が不在のときの代理者もあわせて決めておくと、アルコールチェックなどの日々の業務が止まりません。
③安全運転管理者の選任
安全運転管理者の選任が必要な事業所では、規程に選任の基準・届出・業務・権限を書いておきます。法律上の業務を規程に書き写すだけでなく、「安全運転管理者は、運転者が飲酒・過労・病気などで正常な運転ができないおそれがあるときは、運転を中止させることができる」というように、運転を止める権限を明記しておくことが重要です。
現場では、上司や役員が運転を急がせて、安全運転管理者が止めにくいこともあります。規程で権限をはっきりさせておけば、安全運転管理者が遠慮せずに判断できます。
道路交通法第75条では、使用者が運転者に無免許運転や酒気帯び運転、過労運転などを命じたり、容認したりすることを禁じています。規程にも「会社および管理者は、運転者に法令に違反する運転を命じ、または容認してはならない」と書いておくと、会社としての姿勢を示せます。
④社用車の使用申請と許可
社用車を使うときは、事前に申請し、許可を得てから使うルールにします。申請書(または予約システム)に記載する項目は次のとおりです。
- 使用者(運転者)の氏名と所属
- 使用する車両(登録番号)
- 使用日時(出発・帰着の予定)
- 行き先と使用目的
- 同乗者の有無
許可する人は、車両管理担当者や所属長などとし、急な外出のときの事後申請をどこまで認めるかも決めておきましょう。毎日同じ営業車を使う担当者がいる場合は、「常用車両」として包括的に許可する方法もあります。
使用申請のルールは、私用や無断使用を防ぐためだけでなく、事故が起きたときに「その日、誰がどこへ行くために運転していたか」を証明する記録にもなります。
⑤運転者の条件と運転者台帳
運転を許可する条件と、運転者台帳の管理方法を定めます。運転者台帳には、氏名・生年月日・免許の種類・免許番号・有効期限・取得年月日・違反歴・事故歴・研修の受講歴などを記録します。
特に大切なのが、免許証の有効期限と、免許停止・取消しがないかの確認です。年に1回は免許証の原本を確認し、写しを保管しましょう。2025年3月からはマイナンバーカードと運転免許証を一体化した「マイナ免許証」の運用も始まっています。マイナ免許証のみを持つ従業員については、券面だけでは免許の情報が確認できないため、どの方法で確認するかを規程で決めておくと安心です。
事業用自動車(緑ナンバー)では運転者台帳の作成が法律で義務づけられていますが、白ナンバーの社用車では義務ではありません。それでも、事故や違反のときに運転者の状況を説明できるよう、白ナンバーでも作成しておくことをおすすめします。
⑥車両管理台帳と運行記録
車両ごとの情報をまとめる車両管理台帳と、日々の使用を記録する運転日報(運行記録)について定めます。台帳は「車の履歴書」、日報は「車の日記」と考えるとわかりやすいでしょう。
| 記録の種類 | 主な記載項目 | 記録する人 | 保存の目安 |
|---|---|---|---|
| 車両管理台帳 | 登録番号、車名・型式、購入/リースの別、車検満了日、自賠責・任意保険の期限、点検・修理の履歴 | 車両管理担当者 | 車両を保有している間+廃車後一定期間 |
| 運転日報 | 運転者、使用日時、行き先、走行距離(メーター)、給油、異常の有無 | 運転者 | 社内で期間を定める(例:1年〜3年) |
| アルコールチェック記録 | 確認者、運転者、確認日時・方法、酒気帯びの有無、指示事項 | 安全運転管理者 | 1年間(法律上の義務) |
運転日報は、安全運転管理者が備え付ける「運転日誌」の役割も兼ねられます。走行距離を記録しておけば、私用の疑いがあるときの確認や、燃費の管理、車の入れ替え時期の判断にも役立ちます。
⑦点検・整備と車検の管理
整備不良による事故を防ぐため、点検・整備のルールを決めます。道路運送車両法では、使用者に日常点検や定期点検を行う義務があります。規程では誰が・いつ・何を点検するかを具体的にしておきましょう。
- 日常点検:運転者が走行距離や運行状態に応じて適切な時期に実施(タイヤの空気圧・溝、灯火類、ブレーキ、エンジンオイル、ウォッシャー液など)
- 定期点検:自家用乗用車は1年ごと(12か月点検)。車両管理担当者が整備工場に依頼
- 車検:自家用乗用車は新車登録から3年、以後2年ごと。満了日を車両管理台帳で管理
- 異常時の対応:運転者は異常に気づいたら運転をやめ、車両管理担当者に報告
車検切れの車を運転すると、運転した人だけでなく、使用者としての会社の責任も問われます。車検切れの車は自賠責保険も切れていることが多く、事故のときの補償にも大きな影響が出ます。期限管理の仕組みは、後半の運用のコツであらためて紹介します。
⑧保険の加入条件
社用車には、法律で加入が義務づけられた自賠責保険に加えて、任意保険の補償内容の基準を規程で決めておきます。
| 対人賠償 | 無制限 |
|---|---|
| 対物賠償 | 無制限(最低でも高額な賠償に備えられる金額) |
| 人身傷害・搭乗者傷害 | 運転者・同乗者のけがに備えて加入 |
| 車両保険 | 車両の価値や用途に応じて判断 |
| 運転者の範囲・年齢条件 | 規程で運転を許可する範囲と一致させる |
自賠責保険は、相手方の人身損害しか補償されず、支払いにも上限があります(死亡で最高3,000万円など)。対物事故や、自賠責の上限を超える賠償には任意保険が欠かせません。社用車の台数が多い会社は、10台以上でまとめて契約できるフリート契約も選択肢になります。
リース車両の場合は、任意保険をリース料金に含めるか、自社で別に契約するかで管理の方法が変わります。どちらの場合も、補償内容が規程の基準を満たしているかを確認しましょう。
⑨安全運転の確保とアルコールチェック
交通法規の遵守と、安全運転のためのルールを定めます。規程に書いておきたい主な内容は次のとおりです。
- 交通法規の遵守(速度、一時停止、シートベルトの着用など)
- 運転中の携帯電話・スマートフォンの使用禁止(通話は停車してから)
- 飲酒運転の禁止と、飲酒した者に車を貸したり運転を頼んだりすることの禁止
- 過労・病気・薬の服用などで正常な運転ができないおそれがあるときの運転禁止
- 長時間運転の際の休憩(例:2時間ごとに休憩)
アルコールチェックについては、いつ・誰が・どの方法で確認し・どう記録するかを手順として書き込みます。運転の前後(業務の開始前・終了後や出勤・退勤時でも可)に、安全運転管理者などが運転者の顔色や呼気のにおい、声の調子を確認し、アルコール検知器で測定します。直行直帰や出張などで対面できないときは、携帯型の検知器を持たせ、ビデオ通話や電話で確認する方法を定めておきましょう。
酒気帯びが確認された場合はその日の運転を禁止し、代わりの運転者を手配することも規程に入れておきます。記録は1年間保存する義務があるため、紙で管理するか、クラウド型のシステムで管理するかも決めておくとよいでしょう。
⑩事故発生時の報告と対応
事故が起きたときに運転者がとるべき行動を、順番どおりに書いておくことが大切です。事故直後は誰でも動揺するので、手順が決まっていないと、警察への届出を忘れたり、その場で示談の約束をしてしまったりしがちです。
- 車を安全な場所に止め、エンジンを切る
- けが人がいれば救護し、必要に応じて119番通報する
- 二次事故を防ぐため、発炎筒や三角表示板で後続車に知らせる
- 110番通報して警察に届け出る(物損事故でも必要)
- 相手方の氏名・連絡先・車両の登録番号・保険会社を確認する
- 車両管理担当者(上司)と保険会社に連絡する
- その場で示談や支払いの約束をしない
- 帰社後、事故報告書を提出する
道路交通法では、事故を起こした運転者に、けが人の救護や危険防止の措置、警察への報告が義務づけられています(第72条)。規程には、事故報告書の様式や提出期限、会社側で誰が保険会社や相手方とのやりとりを担当するのかも書いておきましょう。運転者向けに、手順を書いたカードを車検証入れに入れておくのもおすすめです。
⑪私的使用・マイカー使用の制限
社用車の私的使用(私用)を禁止するのか、例外的に認めるのかを決めます。原則禁止とし、例外を認める場合は許可制にするのが一般的です。あわせて、マイカーを業務で使う場合の許可制や、費用の精算方法も定めます。
私用とマイカーの扱いは、社員から質問が多く、トラブルにもなりやすい項目です。それぞれ、この後の章で詳しく解説します。
⑫損害賠償と違反時の懲戒
最後に、従業員の故意や重大な過失で会社に損害が出た場合の賠償と、規程に違反したときの懲戒処分について定めます。ここで注意したいのは、「事故を起こしたら罰金○円」のような定めはできないことです。
労働基準法では、違約金や損害賠償額をあらかじめ決めておくことが禁止されています(第16条)。また、従業員に損害を負担させる場合も、裁判例では会社がその全額を請求できるとは限らず、事情に応じて大きく制限される傾向があります。詳しくは、違反時の罰則の決め方の章で解説します。
車両管理規程のひな形の構成と作り方の手順
ここからは、実際に車両管理規程を作るときの章立てと手順を紹介します。インターネット上のひな形をそのまま使うのではなく、自社の車の台数や使い方に合わせて調整することが大切です。
総則から附則までの章立てのひな形
車両管理規程は、総則→管理体制→使用→運転者→安全運転→点検・保険→事故→私用・マイカー→賠償・懲戒→附則の流れで組み立てると、読みやすく漏れも少なくなります。
| 章 | 主な条文 | 記載する内容の例 |
|---|---|---|
| 第1章 総則 | 目的/定義/適用範囲 | 規程の目的、車両・運転者の定義、対象とする車両 |
| 第2章 管理体制 | 車両管理責任者/安全運転管理者 | 責任者と担当者の役割、安全運転管理者の選任と権限 |
| 第3章 車両の使用 | 使用申請/鍵の管理/使用後の報告 | 申請の方法、許可する人、鍵の受け渡し、運転日報 |
| 第4章 運転者 | 運転者の条件/運転者台帳/研修 | 運転を許可する条件、免許の確認、研修の受講 |
| 第5章 安全運転 | 遵守事項/飲酒運転の禁止/アルコールチェック | 交通法規の遵守、酒気帯び確認の手順と記録 |
| 第6章 点検・整備・保険 | 日常点検/定期点検・車検/保険 | 点検の担当と時期、任意保険の補償基準 |
| 第7章 事故・違反 | 事故時の措置/報告/交通違反の処理 | 事故直後の行動、報告書、反則金の負担 |
| 第8章 私的使用・マイカー | 私的使用の禁止/マイカーの業務使用 | 例外の許可手続き、マイカーの保険・費用精算 |
| 第9章 損害賠償・懲戒 | 損害の負担/懲戒 | 従業員への求償の考え方、就業規則による懲戒 |
| 附則 | 施行日/改廃 | 施行日、改正の手続き |
社用車が数台しかない小さな会社なら、章を分けずに20条前後にまとめても十分です。反対に、拠点や車両が多い会社は、「アルコールチェック実施要領」「マイカー業務使用規程」のように細則を別に作る方法もあります。様式(使用申請書、運転日報、事故報告書、マイカー使用許可申請書など)も、規程の別紙としてセットで用意しておきましょう。
規程を作る5つのステップ
車両管理規程は、次の5つのステップで作ると進めやすくなります。
- 現状を把握する:車両の台数・種類・所有形態、運転する従業員、使い方(営業・配送・役員送迎など)、保険の内容を洗い出す
- 課題を整理する:鍵の管理、私用、車検切れ、アルコールチェックの記録漏れなど、いま起きている・起きそうな問題を挙げる
- 規程の案を作る:ひな形の章立てをもとに、自社の実態に合わせて条文を書く。様式もあわせて作る
- 関係者に確認する:現場の運転者や拠点の管理者、必要に応じて社会保険労務士や保険代理店に内容を確認してもらう
- 施行・周知する:施行日を決めて社内に周知し、研修や説明会で内容を伝える
最初から完璧な規程を目指す必要はありません。現場で守れないルールは形だけになるので、まずは事故防止に直結する項目(運転者の許可、アルコールチェック、事故対応、私用の制限)をしっかり固め、運用しながら見直していくのが現実的です。
就業規則との整合と従業員への周知
車両管理規程を就業規則の付属規程として作った場合、規程は就業規則の一部として扱われます。常時10人以上の従業員がいる事業場では、就業規則を変更したときと同じように、労働者の過半数代表者の意見を聴き、意見書を添えて労働基準監督署に届け出る必要があります。
就業規則の書き方は、厚生労働省のモデル就業規則が参考になります。モデル就業規則にある懲戒の種類や事由と、車両管理規程の違反時の扱いがかみ合っているかを確認しておきましょう。
また、就業規則や規程は、従業員に周知しなければ効力が認められないことがあります。社内ポータルへの掲載や、各拠点への備え付けなどで、従業員がいつでも内容を確認できる状態にしておきましょう。運転者には、規程の要点をまとめたチェックリストを配り、研修のときに説明すると定着しやすくなります。
法改正や車両の増減にあわせた見直し
車両管理規程は、作って終わりではありません。次のようなタイミングで見直しましょう。
- 道路交通法など関係法令が改正されたとき(例:アルコールチェックの義務化、法定速度の変更)
- 社用車の台数が増え、安全運転管理者や副安全運転管理者の選任が必要になったとき
- リースへの切り替え、マイカーの業務使用の開始など、車の使い方が変わったとき
- 事故やヒヤリハットが起きたとき(再発防止策を規程に反映する)
- 任意保険の契約内容を変更したとき
特に法改正は見落としやすいので、年に1回は規程の見直し日を決めておくと安心です。2026年は4月に自転車の青切符と自転車の側方を通過するときのルール、9月に中央線のない一般道路の法定速度30km/h化が始まるなど、社用車の運転にかかわる変更が続いています。安全運転のルールや研修の内容に反映しておきましょう。
社用車の私用はどこまで認める?ルールの決め方
社用車の私用は、社員からの質問も多く、会社によって考え方が分かれる部分です。ここでは、原則禁止にする理由と、例外を認めるときのルールの決め方を解説します。
私用を原則禁止にする理由(事故・保険・税金)
社用車の私用は、原則禁止にするのが安全です。理由は大きく3つあります。
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 事故の責任 | 会社の車である以上、私用中の事故でも運行供用者責任を問われることがある |
| 保険の補償 | 任意保険の使用目的や運転者の範囲によっては、私用中の事故や家族の運転が補償されないおそれがある |
| 税金 | 私用分のガソリン代や車両の使用が、従業員・役員への給与(経済的利益)として課税対象になることがある |
特に注意したいのが税金です。役員が社用車を日常的に私用に使っていると、税務調査で私用分の費用が経費として認められなかったり、役員への給与とみなされたりすることがあります。私用を例外的に認める場合も、私用分の費用を本人に負担してもらうなど、公私の区別をはっきりさせておくことが大切です。
このほか、私用の走行が増えると車の消耗が早くなり、リース車両なら走行距離の超過精算が発生することもあります。こうした理由から、規程では「社用車は業務以外の目的に使用してはならない」と定めるのが基本です。
例外的に認めるときの許可手続きと記録
地方の営業所などで、社用車がないと生活に不便な事情がある場合や、福利厚生として週末の利用を認めたい場合もあるでしょう。例外を認めるときは、許可制・記録・費用負担の3点をセットにします。
- 事前に私用許可申請書を提出し、車両管理責任者の許可を得る
- 運転できるのは許可を受けた本人のみ(家族の運転は不可)
- 使用日時・行き先・走行距離を運転日報に記録する
- 私用分のガソリン代・高速代・駐車場代は本人が負担する
- 私用中の交通違反や事故の費用負担を事前に取り決める
任意保険の契約内容が私用を前提にしていない場合は、保険会社や代理店に確認してから許可しましょう。また、許可した私用でも、アルコールチェックや安全運転のルールは業務中と同じように守ってもらう必要があります。
通勤・自宅への持ち帰り・休日利用の扱い
私用の中でも判断に迷いやすいのが、通勤での利用と自宅への持ち帰りです。「通勤」「持ち帰り」「休日利用」を分けて、それぞれ認めるかどうかを規程に書くとトラブルを防げます。
| 使い方 | 一般的な扱い | 規程で決めておくこと |
|---|---|---|
| 通勤での利用 | 直行直帰が多い営業職などで認める例がある | 対象者、ルート、通勤中の事故の扱い、通勤手当との関係 |
| 自宅への持ち帰り | 翌朝早い出発や遠方の現場がある場合に限り認める例が多い | 許可の条件、自宅での保管場所、鍵の管理 |
| 休日の利用 | 原則禁止とする会社が多い | 例外を認める場合の許可手続きと費用負担 |
通勤での利用を認める場合は、通勤中の事故も会社の責任が問われやすくなります。持ち帰りを認める場合は、自宅の駐車場の確保や盗難・いたずらへの対策も必要です。いずれも「上司が口頭で許可した」という運用ではなく、許可した事実を記録に残しておきましょう。
私用中に事故を起こしたときの責任と費用負担
私用中の事故であっても、会社の車である以上、被害者に対しては会社も責任を問われることがあります。特に、会社が私用を許可していたり、黙認していたりした場合は、運行供用者責任が認められやすくなります。
一方で、会社と従業員の間では、私用中の事故の費用をどう負担するかを規程で決めておくことができます。たとえば、次のような定めです。
- 許可を得ずに私用した場合は、会社が負担した損害を従業員に請求することがある
- 許可を得た私用でも、保険で補償されない損害(免責金額など)は従業員が負担する
- 私用中の交通違反の反則金・罰金は本人が負担する
ただし、従業員に損害を負担させる金額は、事情に応じて相当な範囲に限られる点に注意が必要です。無断の私用を防ぐには、費用負担のルールよりも、鍵の管理や使用申請の徹底のほうが効果的です。
マイカーを業務で使わせるときのルール
社用車が足りないときや、出張・外回りの効率を考えてマイカーの業務使用を認める会社もあります。ただし、マイカーは会社の管理が届きにくいため、社用車以上にルールをしっかり決めておく必要があります。
許可制にして任意保険の補償内容を確認する
マイカーの業務使用は、会社への申請と許可を必須にするのが鉄則です。許可するときは、次の書類を提出してもらい、条件を満たしているかを確認します。
| 運転免許証 | 有効期限、免許の種類、違反の状況 |
|---|---|
| 車検証 | 車検の有効期限、所有者・使用者 |
| 自賠責保険の証明書 | 有効期限 |
| 任意保険の証券 | 補償内容、使用目的、運転者の範囲、有効期限 |
| 誓約書 | 規程を守ること、事故時の報告などへの同意 |
任意保険では、対人・対物賠償が無制限であることに加え、使用目的が「業務使用」になっているかを必ず確認しましょう。保険会社によっては、使用目的が「日常・レジャー」や「通勤・通学」のままだと、業務中の事故が補償されないおそれがあります。保険の更新のたびに証券の写しを提出してもらい、補償が切れていないかも確認します。
マイカーを業務で使う従業員も、所属する事業所が安全運転管理者の選任事業所であれば、アルコールチェックの対象になります。社用車と同じ手順で確認・記録しましょう。
ガソリン代・駐車場代など費用の精算方法
マイカーの業務使用にかかる費用は、精算の方法と単価を規程で決めておくとトラブルを防げます。主な精算方法は次の2つです。
| 精算方法 | 内容 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 走行距離に応じた精算 | 業務で走った距離×1kmあたりの単価(例:○円/km)で支給 | 使った分だけ公平に精算できる | 運転日報で業務の走行距離を記録する必要がある |
| 実費精算 | ガソリン代・高速代・駐車場代を領収書で精算 | 実際の支出と一致する | 私用分のガソリンと区別しにくい |
走行距離に応じた精算では、ガソリン代だけでなく、車の消耗分(タイヤ・オイルなど)を含めて単価を決める会社もあります。高速代や駐車場代は、走行距離の単価とは別に実費で精算するのが一般的です。
費用の精算とあわせて、業務中の駐車違反や、業務中の事故で自分の車が壊れたときの修理費をどうするかも決めておきましょう。業務で使っている以上、従業員にすべてを負担させるのは不公平と受け取られやすく、マイカーの業務使用に協力してもらいにくくなります。
マイカーの業務使用で事故が起きたときの会社の責任
マイカーでの業務中に事故が起きた場合、会社も使用者責任や運行供用者責任を問われる可能性があります。会社が業務使用を指示・許可していたり、ガソリン代を支給していたりすれば、会社がその車の運行を支配し、利益を得ていると判断されやすくなるからです。
裁判例の傾向としては、会社がマイカーの業務使用を禁止し、実際にも使わせていなかった場合は責任を否定されやすく、反対に業務での利用を認めていたり、黙認していたりした場合は責任を認められやすいとされています。
事故のときは、まず従業員の任意保険で対応するのが基本です。そのうえで、保険で補償されない部分や、従業員の保険の等級が下がることによる保険料の増加分を会社がどこまで負担するかも、あらかじめ決めておきましょう。会社が補償を上乗せするために、企業向けの使用者賠償責任をカバーする保険に加入する方法もあります。
社用車の管理方法と規程を形だけにしない運用のコツ
規程を作っても、現場で守られなければ意味がありません。ここでは、規程を日々の運用に落とし込むためのコツを紹介します。
鍵の受け渡しと車両予約の管理
無断使用や私用を防ぐうえで、もっとも効果的なのが鍵の管理です。鍵を机の引き出しや壁のフックに置いたままにせず、鍵の保管庫(キーボックス)で管理し、受け渡しのたびに記録を残しましょう。
- 鍵は施錠できる保管庫で管理し、管理者が受け渡す
- 貸出・返却の日時、使用者、車両、走行距離を鍵の受け渡し簿に記録する
- 車両の予約は共有のカレンダーや予約システムで行い、重複を防ぐ
- 返却時に車内の忘れ物、燃料の残量、傷の有無を確認する
最近は、暗証番号やICカードで開ける電子キーボックスもあります。誰がいつ鍵を取り出したかが自動で記録されるため、管理者が不在がちな拠点でも運用しやすくなります。
運転日報とアルコールチェック記録の保存
運転日報とアルコールチェックの記録は、「書くだけ」で終わらせず、管理者が定期的に確認することが大切です。
記録の確認では、次のような点を見るとよいでしょう。
- 記入漏れや、同じ筆跡・同じ時刻での一括記入がないか
- 走行距離が行き先に対して不自然に多くないか(私用の疑い)
- アルコールチェックの記録に、確認者・確認方法・酒気帯びの有無がすべて書かれているか
- 異常の報告があった車両の修理・点検が済んでいるか
アルコールチェックの記録には、確認者名、運転者、自動車登録番号、確認の日時と方法、酒気帯びの有無、指示事項などを書き、1年間保存します。紙で管理する場合は保管場所とファイルの分け方を決め、データで管理する場合は改ざんできない形で保存しておくと安心です。
車検・保険・運転免許の期限切れを防ぐ仕組み
車検・自賠責保険・任意保険・運転免許は、どれか1つでも切れると、事故のときに大きな問題になる期限です。担当者の記憶に頼らず、仕組みで管理しましょう。
| 期限 | 確認のタイミング | 管理の方法の例 |
|---|---|---|
| 車検 | 満了日の2か月前 | 車両管理台帳に満了日を記録し、カレンダーにリマインドを登録 |
| 自賠責保険 | 車検と同時 | 車検のときに更新されるため、車検の管理とあわせて確認 |
| 任意保険 | 満期日の1〜2か月前 | 保険代理店からの案内とあわせて、補償内容も見直す |
| 運転免許 | 年1回の定期確認+更新時 | 運転者台帳に有効期限を記録し、更新後に写しを提出してもらう |
期限の一覧を表計算ソフトで作り、満了日が近いものに色が付くように設定しておくだけでも、期限切れはかなり防げます。担当者が異動したときにも引き継ぎやすくなります。
車両管理システムで手間を減らす
社用車の台数が増えると、紙や表計算ソフトでの管理は手間がかかります。そうしたときは、車両管理システム(クラウド型の車両管理サービス)を使うと、管理部門の負担を大きく減らせます。
| 機能 | できること |
|---|---|
| 予約・鍵の管理 | スマートフォンから車両を予約し、電子キーボックスと連携して鍵を受け渡す |
| 運転日報の自動作成 | 車載器やスマートフォンの位置情報から、走行ルートや距離を自動で記録する |
| アルコールチェックの記録 | 検知器と連携して、測定結果や顔写真をクラウドに自動保存する |
| 安全運転の分析 | 急ブレーキや急加速、速度超過を検知して、運転者ごとに傾向を見える化する |
| 期限の管理 | 車検・保険・免許の期限を登録し、満了が近づくと通知する |
導入するときは、自社の台数や使い方に必要な機能だけを選ぶことが大切です。たとえば、アルコールチェックの記録と期限の管理だけを先にシステム化し、運転日報の自動化はあとから検討する、という進め方もあります。導入の費用は、車載器の購入費と1台あたりの月額料金がかかるものが多いので、複数のサービスで見積もりを取って比べましょう。
車両管理規程に違反したときの罰則の決め方
規程を守ってもらうためには、違反したときの扱いも決めておく必要があります。ただし、会社が自由に罰則を決められるわけではありません。法律の制限を押さえておきましょう。
罰金を取ることはできない(労働基準法16条)
「社用車で事故を起こしたら1回につき1万円」「アルコールチェックを忘れたら罰金5,000円」のような定めは、労働基準法違反になるため作れません。労働基準法第16条は、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額をあらかじめ決めておいたりすることを禁止しているからです。
ただし、実際に生じた損害を従業員に請求すること自体は禁止されていません。とはいえ、裁判例では会社が全額を請求できるとは限りません。最高裁判所の判決(昭和51年7月8日・茨石事件)では、会社の事業の性格や従業員の業務内容、加害行為の予防への会社の配慮の程度などを考慮して、会社が従業員に請求できるのは損害額の4分の1が限度と判断されました。この割合は事案ごとに変わりますが、全額の請求が認められるケースは多くありません。
また、令和2年2月28日の最高裁判決では、従業員が先に被害者に賠償した場合に、従業員から会社へ負担を求める「逆求償」も認められています。会社は社用車の事故による損害を、事業の利益を得ている者として相応に負担する立場にある、という考え方です。規程では「故意または重大な過失により会社に損害を与えた場合は、損害の全部または一部を賠償させることがある」のように、事情に応じて判断する書き方にしておきましょう。
減給の上限と懲戒処分の段階
規程違反に対して減給処分をする場合は、労働基準法第91条の上限を守る必要があります。1回の違反での減給額は平均賃金の1日分の半額まで、複数の違反があっても総額は1回の賃金支払期の賃金総額の10分の1までです。
| 懲戒処分の種類 | 内容 | 車両管理規程の違反での適用例 |
|---|---|---|
| 戒告・けん責 | 口頭または文書で注意し、始末書を提出させる | 運転日報の記入漏れ、使用申請のし忘れ |
| 減給 | 労働基準法91条の範囲内で賃金を減額する | 注意後も繰り返す無断の私用、アルコールチェックの拒否 |
| 出勤停止 | 一定期間の出勤を停止し、その間は無給とする | 重大な速度超過、酒気帯びでの出勤(運転には至らず) |
| 降格 | 役職や等級を下げる | 管理者による確認の怠りや記録の改ざん |
| 諭旨解雇・懲戒解雇 | 退職を勧告する、または解雇する | 飲酒運転、ひき逃げなどの重大な違反 |
処分の重さは、違反の内容・回数・会社への影響とのバランスがとれている必要があります。軽い違反に重すぎる処分をすると、懲戒権の濫用として無効になるおそれがあります(労働契約法第15条)。また、運転を一定期間禁止する「運転停止」や、安全運転研修の再受講を処分とは別の措置として定めておくと、段階的に対応しやすくなります。
懲戒の根拠を就業規則に定めておく
懲戒処分をするには、就業規則に懲戒の種類と事由が書かれていることが前提です。車両管理規程だけに懲戒を書いても、就業規則に根拠がなければ処分できないおそれがあります。
就業規則の懲戒事由に「車両管理規程その他会社の規程に違反したとき」「飲酒運転、無免許運転その他の重大な交通違反をしたとき」といった項目を入れておきましょう。そのうえで、車両管理規程には「この規程に違反した者は、就業規則の定めるところにより懲戒処分を行う」と書き、両方をつなげておきます。
交通違反の反則金については、法律上は違反をした運転者個人に科されるものです。会社が業務中の違反の反則金を負担した場合、国税庁の法人税基本通達9-5-12により、その金額は損金に算入できません。業務と関係のない違反の反則金を会社が負担すると、その従業員への給与として扱われます。規程では「交通違反の反則金・罰金は運転者本人が負担する」と定めておくのが一般的です。なお、放置駐車違反で運転者が反則金を納めない場合は、車の使用者である会社に放置違反金の納付が命じられる点にも注意しましょう。
役員車・運転手付きの社用車は規程に何を書き足す?
役員車は、一般の社用車と使い方が大きく違います。役員本人は運転しない、運転手が専任で担当する、送迎の時間が不規則、家族が同乗することもある、といった点です。一般の社用車向けの規程のままでは、役員車ならではのルールが抜け落ちがちです。
専任の運転手が運転する場合の運転者の範囲
役員車を専任の運転手が運転する場合は、「誰が役員車を運転できるのか」を規程ではっきりさせることが大切です。運転手が休んだ日に、役員本人や秘書、総務の担当者が代わりに運転することがあるなら、その人たちも運転者として登録し、任意保険の運転者の範囲に含めておく必要があります。
| 運転する人 | 規程で決めておくこと | 保険で確認すること |
|---|---|---|
| 自社で雇用した専任の運転手 | 勤務時間、待機時間の扱い、運転以外の業務の範囲 | 運転者の範囲・年齢条件 |
| 外部の専門会社の運転手 | 委託する業務の範囲、事故時の責任分担 | 会社の保険と委託先の保険のどちらで補償するか |
| 代わりに運転する役員・社員 | 代わりに運転できる人と条件 | 運転者限定を付けていないか |
| 役員の家族 | 原則として運転させないかどうか | 家族が運転したときに補償されるか |
専任の運転手を自社で雇用する場合は、運転手の勤務時間の管理も規程や雇用契約で決めておきましょう。役員の会食や出張にあわせて早朝・深夜の運転が続くと、長時間労働や過労運転につながります。待機時間も労働時間にあたるため、運転していない時間を含めて勤務時間を管理する必要があります。自社で運転手を雇う場合の費用や注意点は、専属運転手を個人契約するときの月額費用とメリット・デメリットでも解説しています。
外部の専門会社に運転を任せるときの取り決め(保険・事故対応・守秘義務)
役員車の運転を外部の専門会社に任せる場合は、車両管理規程とは別に、委託先との契約書で責任の分担を決めておくことが重要です。特に次の3つは、契約前に必ず確認しましょう。
- 保険:自社の任意保険の運転者の範囲に委託先の運転手が含まれるか、委託先の保険でどこまで補償されるか
- 事故対応:事故が起きたときの初期対応、警察・保険会社への連絡、損害の負担を誰が行うか
- 守秘義務:車内の会話や行き先、役員のスケジュールなどの情報を外部に漏らさない取り決め(秘密保持契約)
- 代わりの運転手:担当の運転手が休んだ日の代わりの手配があるか
- アルコールチェック:運転前後の確認を誰が行い、記録をどう共有するか
役員車の車内では、経営方針や取引先との交渉、人事など、外に出せない話をすることも少なくありません。運転手個人の誓約だけでなく、会社同士で秘密保持契約を結んでおくと安心です。
また、指揮命令の範囲や契約の形は委託先によって異なります。契約書の内容と、実際の指示の出し方がかみ合っているかも確認しておきましょう。東京で役員運転手を任せられる会社の料金やサービスの違いは、東京の役員運転手の会社10社の比較にまとめています。
役員の私用送迎や家族の同乗の扱い
役員車でとくに問題になりやすいのが、役員の私用での送迎や、家族の同乗です。役員の自宅と会社の間の送迎は、多くの会社で業務の一環として認められていますが、休日のゴルフや家族の送り迎えなどの私用は、扱いを決めておかないと公私混同と見られかねません。
| 使い方 | 扱いの例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自宅と会社の間の送迎 | 業務として認める | 送迎の範囲(自宅の場所、時間帯)を決めておく |
| 会食・接待への送迎 | 業務として認める | 業務との関連を運転日報に記録する |
| 休日のゴルフ・私用の外出 | 原則認めない、または費用を本人負担とする | 私用分は役員給与とみなされるおそれ |
| 家族の送迎・同乗 | 原則認めない、または許可制とする | 保険の補償範囲、私用としての扱い |
役員の私用分を会社の経費にすると、税務調査で役員給与とみなされ、会社と役員の双方に追加の税負担が生じることがあります。私用を認める場合は、運転日報で業務と私用を区別し、私用分の費用を役員本人に負担してもらう仕組みにしましょう。規程に書いておけば、運転手も「これは私用にあたるので記録します」と伝えやすくなります。
運転を任せて管理部門の負担を軽くする
役員車の管理では、運転手の採用・教育、勤務時間の管理、休んだ日の代わりの手配、アルコールチェック、事故対応と、総務や秘書の担当者にかかる負担が想像以上に大きいのが実情です。運転手が1人しかいないと、急な休みのたびに役員の予定が狂ってしまうこともあります。
こうした負担を減らす方法として、運転業務を外部の専門会社に任せるという選択肢があります。採用や教育、勤務の管理、代わりの運転手の手配を任せられれば、管理部門は車両の管理と規程の運用に集中できます。
外部に任せる場合も、車両管理規程の対象から外れるわけではありません。委託先の運転手を「運転者」として規程にどう位置づけるのか、アルコールチェックの記録をどう受け取るのかを決めておきましょう。役員車の運転手の仕事内容や、自社で雇う場合との違いは、お抱え運転手の仕事内容と雇うメリット・デメリットも参考にしてください。
車両管理規程・社用車ルールのよくある質問
車両管理規程や社用車のルールについて、よくある質問をまとめました。
- 車両管理規程の作成は法律上の義務?
- 社用車が1台だけでも規程は必要?
- 社用車を通勤に使わせてもいい?
- 社用車で受けた交通違反の反則金は誰が払う?
- 車両管理規程と安全運転管理規程の違いは?
- リース車両にも車両管理規程は適用される?
車両管理規程の作成は法律上の義務?
車両管理規程そのものの作成は、法律上の義務ではありません。ただし、安全運転管理者の選任やアルコールチェック、点検・整備など、法律で義務づけられている業務は多くあります。これらを確実に行い、事故のときに会社の責任範囲をはっきりさせるためにも、社用車を使う会社は規程を作っておくことをおすすめします。
社用車が1台だけでも規程は必要?
社用車が1台だけでも、簡単な規程は作っておくのがおすすめです。台数が少なくても、事故が起きれば会社が使用者責任や運行供用者責任を問われる点は同じだからです。1台だけなら、運転者の許可、使用申請、私用の禁止、事故時の対応、保険の基準など、10条程度のシンプルな規程でも十分です。安全運転管理者の選任が不要な台数でも、飲酒運転の禁止や運転前の確認は規程に入れておきましょう。
社用車を通勤に使わせてもいい?
会社が認めれば、社用車を通勤に使わせることはできます。直行直帰の多い営業職などで認める会社もあります。ただし、通勤中の事故も会社の責任が問われやすくなるため、対象者・ルート・保険の補償範囲を規程で決め、許可制にしておきましょう。通勤に使う場合でも、業務を始める前後のアルコールチェックは必要です。
社用車で受けた交通違反の反則金は誰が払う?
交通違反の反則金は、違反をした運転者本人が払うのが原則です。会社が業務中の違反の反則金を負担しても損金にはできず、業務と関係のない違反の反則金を負担すると従業員への給与として扱われます。規程で「反則金・罰金は運転者本人の負担とする」と定めておきましょう。ただし、放置駐車違反で運転者が反則金を納めない場合は、車の使用者である会社に放置違反金の納付が命じられます。
車両管理規程と安全運転管理規程の違いは?
車両管理規程は、車の管理と使い方全般(使用申請、点検、保険、私用の制限など)を定めるものです。一方、安全運転管理規程は、安全運転管理者の業務やアルコールチェック、運転者の健康管理、安全運転の教育など、安全運転の確保に特化したルールを定めるものです。小さな会社では1つの車両管理規程にまとめ、台数の多い会社では安全運転管理規程を別に作ることが多くなっています。
リース車両にも車両管理規程は適用される?
リース車両にも車両管理規程は適用されます。車検証上の所有者がリース会社でも、日々の運行を管理する使用者は会社だからです。規程の「車両」の定義にリース車両を含め、あわせてリース契約の走行距離制限や原状回復の条件、保険の内容も確認しておきましょう。メンテナンスリースの場合は、点検・車検をリース会社に任せられるため、規程の点検の項目に「リース契約にもとづく点検はリース会社の案内に従う」と書いておくとわかりやすくなります。
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