社用車の経費はどこまで認められる?勘定科目・減価償却と役員車が税務調査で否認されないポイント

社用車・役員車の経費はどこまで認められる?|白手袋でハンドルを握る運転手と後部座席で書類を確認する役員、「役員車は否認される?」の問いかけ

社用車にかかる費用は、購入代金からガソリン代、駐車場代、保険料まで、業務に使っている部分であれば会社の経費(法人税法上の損金)にできます。一方で、社長や役員が使う車は私用との境目があいまいになりやすく、税務調査で「役員への給与ではないか」と指摘されやすい項目でもあります。

この記事では、社用車を経費にするための基本ルールから、購入・ローン・リース別の仕訳と減価償却、維持費ごとの勘定科目、役員車が税務調査で否認されないための記録の残し方までを、2026年10月時点の税制にもとづいてまとめました。2026年4月から変わった少額減価償却資産の特例(40万円未満へ引き上げ)や、2026年3月末で廃止された環境性能割にも触れています。

  • 社用車や役員車を買う・リースする予定がある経営者や経理担当者
  • 役員車の費用がどこまで経費になるのか、税務調査が不安な方
  • 役員車の運転手にかかる費用の扱いも含めて整理したい総務担当者

このような方は、ぜひ参考にしてください。なお、記事の内容は一般的な取扱いです。実際の処理は会社の状況によって変わるため、最終的には顧問税理士に確認してください。

目次

社用車は経費にできる?まず押さえたい基本ルール

社用車の費用を経費にできるかどうかは、「誰の名義か」と「業務に使っているか」の2点で考えます。車種や価格に法律上の上限はなく、業務に必要で、実際に業務に使っていることが説明できれば、高額な車でも経費になります。

経費にできるのは法人名義で業務に使う車

結論から言うと、会社の経費にできるのは、原則として法人名義(または法人がリース契約した)車で、業務に使っているものです。

車検証の「所有者」または「使用者」が会社になっていれば、購入代金は車両運搬具として資産に計上し、減価償却で毎年少しずつ費用にします。ガソリン代や保険料などの維持費も、会社が支払った分をそのまま経費にできます。

ただし、名義が会社でも、使い方が業務でなければ経費にはなりません。法人税では「業務との関連」が判断の軸で、次のような使い方は業務と認められやすいものです。

  • 取引先への訪問、営業、現場の巡回
  • 役員の出張・会議・会食への移動
  • 来客や取引先の送迎
  • 銀行や役所など会社の手続きのための移動

反対に、休日の家族旅行や子どもの送迎など、会社の仕事と関係のない使い方は経費の対象外です。私用が混ざる場合は、その分を役員や従業員の負担にするか、給与として扱う必要があります(後述の私的利用分は役員への給与とみなされることがあるで詳しく解説します)。

社長個人名義の車を会社で使う場合の扱い

中小企業では、社長が個人で買った車をそのまま会社の仕事に使っているケースも少なくありません。この場合、個人名義の車の購入代金を会社の資産として減価償却することはできません。会社が経費にできるのは、次のいずれかの形をとった場合です。

方法やり方注意点
会社に売却して名義を変える社長から会社へ時価で売却し、車検証の名義を会社に変える売却価格は中古車の相場で決める。社長側では譲渡所得の扱いになる
会社が借り上げる社長と会社で賃貸借契約を結び、会社が使用料を払う使用料が相場より高いと役員給与とみなされる。社長側は雑所得などとして申告が必要
実費を精算する業務で使った分のガソリン代や高速代を会社が精算する運転日報などで業務の走行を記録しておく

いちばんすっきりするのは、会社に売却して名義を変える方法です。購入代金を会社の資産として減価償却でき、保険や自動車税も会社の契約・負担に切り替えられます。

借り上げや実費精算で済ませる場合は、業務で使った距離や日時を記録しておかないと、会社が払った分を説明できなくなります。とくに個人名義の車は私用にも使うのが前提なので、会社負担の根拠を残しておくことが大切です。

購入・ローン・リースで経費の計上方法が変わる

社用車の手に入れ方によって、経費になるタイミングと勘定科目が変わります。

手に入れ方経費になり方主な勘定科目
現金で購入車両代は減価償却で数年に分けて費用化車両運搬具・減価償却費
ローンで購入車両代は減価償却、ローンの利息は支払時に費用車両運搬具・減価償却費・支払利息
リース契約毎月のリース料を費用にする処理が中小企業では一般的賃借料(支払リース料)
中古車を購入減価償却だが、耐用年数を短くできる車両運搬具・減価償却費

ポイントは、購入(現金・ローン)では「払った時期」と「経費になる時期」がずれることです。300万円の車を一括で払っても、その年に300万円がまるごと経費になるわけではありません。資金繰りと税金の両面から、どの方法が自社に合うかを考えましょう。具体的な仕訳は次の章で解説します。

購入方法別の社用車の経費計上と仕訳

ここからは、購入方法ごとに具体的な仕訳と経費になる金額の目安を見ていきます。仕訳の金額は税抜経理を前提にした例です。

現金で新車を購入した場合は減価償却で費用化

新車を買った場合は、車両本体の代金を車両運搬具として資産に計上し、法定耐用年数に沿って毎年減価償却費を計上します。

一般的な社用車の法定耐用年数は次のとおりです。

普通自動車(乗用車)6年
軽自動車(総排気量0.66リットル以下)4年
貨物自動車(ダンプ式以外)5年
二輪自動車3年

償却方法には毎年同じ額を費用にする定額法と、初めのうちに多く費用にする定率法があり、法人は届出をしなければ定率法、個人事業主は定額法になります(国税庁「減価償却資産の償却限度額の計算方法」)。

600万円の普通自動車を事業年度の初めに買った場合の償却額は、次のとおりです。

年定率法(償却率0.333)定額法(償却率0.167)
1年目約199.8万円約100.2万円
2年目約133.3万円約100.2万円
3年目約88.9万円約100.2万円

年度の途中で買ったときは、使い始めた月から事業年度末までの月数で按分します。決算月の直前に買っても、その年に計上できるのは1〜2か月分だけなので、「決算前に車を買えば大きく節税できる」というわけではありません。

仕訳の例は次のとおりです。

タイミング借方貸方
購入時車両運搬具 6,000,000円普通預金 6,000,000円
決算時(定率法・12か月)減価償却費 1,998,000円車両運搬具 1,998,000円

なお、購入時に払う自動車税(月割分)、自動車重量税、自賠責保険料、登録手数料などは、車両の取得価額に含めずにそれぞれ費用にできます。リサイクル料金は預け金なので、リサイクル預託金として資産に計上し、車を手放すときに精算します。

ローンで購入した場合は利息と本体を分けて処理

ローンで買った場合も、車両の扱いは現金購入と同じで、車両代は減価償却で費用にします。毎月の返済額をそのまま経費にはできない点に注意してください。

経費にできるのは、毎月の返済のうち利息の部分だけです。返済額は「元本の返済」と「利息」に分け、利息だけを支払利息として計上します。

タイミング借方貸方
購入時(頭金50万円・残り250万円をローン)車両運搬具 3,000,000円普通預金 500,000円/未払金 2,500,000円
毎月の返済(元本4万円・利息2,000円)未払金 40,000円/支払利息 2,000円普通預金 42,000円
決算時減価償却費(定率法なら1年目約99.9万円)車両運搬具

ディーラーのオートローンは「未払金」、銀行から借りて買った場合は「長期借入金」で処理するのが一般的です。返済予定表を保管しておけば、元本と利息の分け方で迷うことはありません。

ローンは手元の資金を残しながら車を持てる一方、経費になるペース(減価償却)と現金が出ていくペース(返済)が合わないため、利益が出ているのに資金が足りないという状況が起きやすくなります。返済期間と耐用年数をそろえておくと管理しやすくなります。

リース契約した場合はリース料を毎月経費にできる

カーリースで社用車を持つ場合、中小企業では毎月のリース料を「賃借料(支払リース料)」としてそのまま経費にする処理が一般的です。

タイミング借方貸方
毎月のリース料支払い賃借料 50,000円普通預金 50,000円

厳密には、社用車のカーリースの多くは税務上の「所有権移転外リース取引」にあたり、売買として扱われてリース期間定額法で償却するのが原則です(国税庁「所有権移転外リース取引」)。ただし、賃借料として経理した金額も償却費として扱われるため、毎月のリース料を経費にすれば、結果的に税務上の扱いと同じになります。

リースのメリットは、頭金がいらず、自動車税・自賠責保険・車検費用などがリース料に含まれるプランなら、毎月の経費が一定になって管理が楽になることです。一方で、途中解約には原則として違約金がかかり、走行距離の上限を超えると精算金が発生します。

なお、上場会社など監査を受ける会社は、2027年4月1日以後に始まる事業年度から新しいリース会計基準が適用され、原則としてリースを資産・負債に計上することになります。中小企業はこれまでどおりの処理を続けられますが、自社がどちらにあたるかは顧問税理士に確認しておきましょう。

中古車を購入した場合の耐用年数の考え方

中古車は、新車の法定耐用年数ではなく、残りの使用可能期間を見積もった年数で償却できます。見積もりが難しい場合は、次の簡便法で耐用年数を計算します(国税庁「中古資産の耐用年数」)。

法定耐用年数をすべて過ぎた車法定耐用年数×20%
法定耐用年数の一部を過ぎた車(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%
端数の扱い1年未満は切り捨て。2年に満たないときは2年

普通自動車(法定耐用年数6年)で計算すると、次のようになります。

経過年数計算耐用年数
2年落ち(6−2)+2×0.2=4.44年
3年落ち(6−3)+3×0.2=3.63年
4年落ち以上(6−4)+4×0.2=2.82年

耐用年数2年の定率法の償却率は1.000なので、4年落ち以上の中古車は、1年分使えば取得価額をほぼ全額その年に費用にできる計算になります。これが「4年落ちの中古車は節税になる」と言われる理由です。

ただし、年度の途中で買えば使った月数分しか計上できず、使い始めた年度に簡便法で計算しなかった場合は後から変えられません。また、事業に使うための改良費(資本的支出)が取得価額の50%を超えると簡便法は使えません。費用を前倒しにしているだけで、売却時には売却益として課税される点も、あとのFAQで解説します。

社用車の維持費で経費にできるものと勘定科目

社用車の維持費は、業務で使っている分なら原則として経費にできます。主な費用と勘定科目をまとめると次のとおりです。

費用主な勘定科目ポイント
ガソリン代・ETC料金・高速代車両費/旅費交通費軽油引取税は消費税の対象外
自動車税・重量税租税公課印紙代も租税公課
自賠責保険・任意保険保険料1年分を前払いした場合の扱いに注意
車検費用・修理費・洗車代車両費/修繕費車検代は法定費用と整備費に分ける
月極駐車場・コインパーキング地代家賃/旅費交通費自宅の駐車場は按分が必要
カーナビ・ドライブレコーダー消耗品費/車両運搬具取得価額で処理が変わる

勘定科目は「車両費」にまとめても問題ありません。大切なのは、毎期同じ科目で処理を続けることです。年によって科目が変わると、前年との比較がしにくくなり、税務調査でも説明に時間がかかります。

ガソリン代・ETC料金・高速代

業務で使う社用車のガソリン代、ETC料金、高速道路の通行料は、車両費または旅費交通費として経費にできます。

ガソリン代はレシートや給油カードの明細を、高速代はETCの利用明細を保管しておきましょう。ETC利用照会サービスや法人ETCカードの明細には、日時と区間が残るため、運転日報と照らし合わせれば業務での移動だったことを示す証拠になります。

経理で気をつけたいのは、ディーゼル車の軽油引取税です。軽油引取税は消費税の対象外(不課税)なので、レシートに分けて書かれている軽油引取税の分は、消費税の仕入税額控除の対象から外します。ガソリン税(揮発油税)は本体価格に含まれる扱いなので、分ける必要はありません。

役員が休日に私用で使ったときの給油代は、会社の経費ではありません。給油カードを役員に渡している場合は、私用の分を本人に精算してもらうルールを決めておきましょう。

自動車税・重量税などの税金

社用車にかかる税金は租税公課として経費にできます。主な税金は次のとおりです。

税金払うタイミング内容
自動車税(種別割)・軽自動車税毎年(4月1日時点の所有者に課税)排気量に応じた年額。納付書は5月ごろ届く
自動車重量税新規登録時・車検時車両重量に応じて課税。エコカー減税の対象車は軽減あり
印紙代など車検時など検査登録手数料

自動車税のような賦課課税の税金は、原則として納付書(賦課決定)が届いた事業年度の経費になり、実際に払った年度に経費として処理することも認められています。

なお、車を買ったときにかかっていた環境性能割(自動車税・軽自動車税)は、2026年3月31日で廃止されました。2026年4月1日以降に登録した車にはかからないため、購入時の諸費用が以前より少なくなっています。

一方で、駐車違反の反則金など、罰金・反則金は税金ではなく、経費にもなりません(詳しくはFAQで解説します)。

自賠責保険・任意保険の保険料

自賠責保険と任意保険(自動車保険)の保険料は、保険料として経費にできます。

注意したいのは、保険期間が決算をまたぐ場合です。原則として、翌期の分は「前払費用」として資産に計上し、翌期に費用に振り替えます。ただし、支払った日から1年以内の分で、毎年同じように処理していれば、支払った期に全額を経費にしてよいとする短期前払費用の特例があります。

車検時に払う自賠責保険料(24か月や25か月分)は1年を超えるため、この特例は使えず、期間に応じて按分する必要があります。

任意保険は、法人名義で契約していれば保険料全額が経費になります。社長個人名義の車で個人が保険を契約している場合は、会社が保険料を払うと役員給与とみなされるおそれがあるため、車と保険の名義を会社にそろえておくのが安全です。

車検費用・修理費・洗車代

車検費用は、中身ごとに勘定科目を分けると正確です。

車検費用の内訳勘定科目消費税
自動車重量税・印紙代租税公課対象外
自賠責保険料保険料非課税
点検・整備費用修繕費/車両費課税
代行手数料支払手数料課税

事故や故障の修理費は修繕費として経費にできます。ただし、元の状態に戻す修理ではなく、性能を上げたり使える期間を延ばしたりする改造(エンジンの載せ替え、業務と関係のない高額なカスタムなど)は資本的支出として車両の取得価額に加え、減価償却で費用にします。

洗車代や車内清掃、ワックスがけは車両費で経費にできます。来客を乗せる役員車では、清潔に保つことも業務の一部です。

月極駐車場代・コインパーキング代

会社の駐車場として借りている月極駐車場代は地代家賃、外出先で使ったコインパーキング代は旅費交通費として経費にできます。

役員の自宅の近くに月極駐車場を借りて社用車を置いている場合は、注意が必要です。自宅から直接取引先に向かうなど業務上の理由があれば経費になりますが、実質的に役員の自家用車の駐車場になっているなら、役員への給与とみなされることがあります。自宅の敷地に社用車を置いて会社が駐車場代を払う形も、同じ考え方で判断されます。

コインパーキング代は領収書が出ないこともあるので、精算書に日時・場所・用件を書いて残しておきましょう。

カーナビ・ドライブレコーダーなどの備品代

カーナビやドライブレコーダー、ETC車載器などの備品は、車を買ったときに一緒に付けたものは車両の取得価額に含めて減価償却します。あとから単独で買ったものは、取得価額によって処理が変わります。

取得価額(1個あたり)処理の方法対象
10万円未満全額をその年の経費(消耗品費)にできる法人・個人事業主
20万円未満3年間で均等に経費にできる(一括償却資産)法人・個人事業主
40万円未満年間合計300万円まで全額をその年の経費にできる青色申告の中小企業者など
40万円以上減価償却(器具備品などの耐用年数で)すべて

40万円未満の特例は、2026年4月1日以後に取得したものから、上限が30万円未満から40万円未満に引き上げられました。適用期限は2029年3月31日までで、対象は常時使用する従業員が400人以下の中小企業者などです(国税庁「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」)。

なお、リース契約で付けた備品や、所有権移転外リースで取得した車両そのものには、この少額資産の特例や一括償却資産の制度は使えません。

役員車の経費が認められるケースと否認されやすいケース

役員車は、税務調査で必ずといってよいほど確認される項目です。高級車だから否認されるのではなく、私的に使っていると判断される事情があるかどうかが問題になります。認められるケースと否認されやすいケースを見ていきましょう。

高級車でも業務との関連を説明できれば経費になる

法人税には、社用車の価格や車種についての上限はありません。高級セダンや外国車でも、業務に使っていることを説明できれば経費になります。

役員車として高級車を使う理由としては、次のようなものが考えられます。

  • 取引先や来賓を送迎する機会が多く、乗り心地や車内の広さが必要
  • 長距離の移動が多く、役員が車内で仕事や休息をとる
  • 会社の信用やブランドイメージを保つ必要がある業種である
  • 安全性能を重視して車種を選んでいる

税務調査で大切なのは、こうした理由が実際の使い方と一致しているかです。業務での移動記録がそろっていれば、価格だけを理由に否認されることは通常ありません。

逆に、2人乗りのスポーツカーや、業務に使いにくい趣味性の高い車は、業務での使用実態をより丁寧に説明する必要があります。来客を乗せられない車を「接待用」と説明しても、納得してもらうのは難しいでしょう。

家族の送迎や休日のレジャーに使っている

社用車を家族の送り迎えや、休日のゴルフ・旅行に使っていると、その部分は私的利用と判断されます。

税務調査では、ETCの利用明細、ガソリンの給油記録、駐車場の利用記録などから、休日や深夜の移動、観光地や役員の自宅周辺での利用が確認されることがあります。運転日報に業務の記録がない日に高速道路を使っていれば、私用と見られてもおかしくありません。

家族の送迎に社用車を使う場面があるなら、使った分のガソリン代などを本人が負担するか、その分を役員給与として処理するルールを決めておきましょう。規程を作らずに見過ごしていると、まとめて役員給与と認定されるおそれがあります。

代表者が自家用車を持たず走行距離が長い

税務調査では、代表者や家族が個人で車を持っているかも確認されます。役員が自家用車を持っていないのに社用車が1台しかない場合、「休日の買い物やレジャーにも社用車を使っているのではないか」と考えるのが自然だからです。

走行距離も判断材料になります。業務内容に比べて年間の走行距離が明らかに長い場合や、土日の走行がある場合は、私用の分が混ざっていると判断されやすくなります。

自家用車を持たない役員が社用車を使う場合は、次のような対策をとっておくと説明しやすくなります。

  • 運転日報で業務の移動を毎回記録する
  • 休日に使う場合は事前に申請し、私用分の費用を本人が負担する
  • 社用車の鍵や保管場所を会社で管理し、業務以外での持ち出しを制限する

短いサイクルで買い替えている・ほとんど乗っていない

前の章で見たとおり、4年落ちの中古車は短期間で償却できます。そのため、決算のたびに高級中古車を買い替えていると、節税目的の購入と見られやすくなります。

また、高額な車を買ったのに走行距離がほとんど伸びていない場合も、業務に必要な車だったのかを問われます。業務で使っていない車は、減価償却費が否認されるだけでなく、車そのものが役員の個人的な資産とみなされるおそれもあります。

買い替えのたびに「なぜ今買い替えるのか」「業務でどう使うのか」を稟議書や取締役会の議事録に残しておくと、後から説明するときの根拠になります。

業務と関係のない過度なカスタム

エアロパーツ、高額なホイール、車高の変更、オーディオの大規模な改造など、業務に必要とは言いにくいカスタムの費用は、経費として認められにくくなります。

業務と関係のない改造費は、会社の経費ではなく役員の個人的な支出として、役員給与と認定される可能性があります。業務に必要な装備でも、車の価値を高めるものは修繕費ではなく資本的支出として減価償却する必要があります。

一方で、ドライブレコーダー、衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備、来客用の車内設備、業務用の車載器などは、業務との関連を説明しやすい装備です。

私用との区分と税務調査で困らないための記録の残し方

役員車を経費として認めてもらうための基本は、業務と私用を分けて、その記録を残すことです。具体的な方法を見ていきます。

私的利用分は役員への給与とみなされることがある

役員が社用車を私的に使った分の費用を会社が負担すると、その分は役員が会社から受けた経済的利益として、役員給与とみなされます。

役員給与は、毎月同じ額を払う定期同額給与など一定の要件を満たさないと、会社の経費(損金)になりません(国税庁「役員に対する給与」)。私的利用の費用は月によって金額がばらつくため、会社の経費として認められないうえに、役員本人にも所得税がかかるという二重の負担が生じやすくなります。

法人税私的利用分の費用が経費(損金)にならない
所得税(役員本人)給与として課税される。会社は源泉徴収が必要
源泉所得税の徴収漏れ会社に不納付加算税・延滞税がかかることがある

このような事態を避けるには、私用の分を本人に負担してもらうのがいちばん確実です。月ごとに私用の走行距離を集計し、ガソリン代などを本人に精算してもらう方法が一般的です。

運転日報・走行記録で業務利用を証明する

業務で使ったことを示すいちばんの証拠は、運転日報(運行記録)です。最低限、次の項目を記録しておきましょう。

日付・時間出発時刻と帰着時刻
運転者・同乗者誰が運転し、誰が乗ったか
行き先・用件訪問先の会社名、会議・送迎などの目的
走行距離出発時と帰着時のメーターの数値
給油・高速代給油量・金額、使った高速道路の区間

社用車を5台以上(乗車定員11人以上の車は1台以上)使う事業所は、安全運転管理者を選任し、運転日誌を備えて記録させることが道路交通法で求められています。台数が少なく義務がない会社でも、同じ形式で記録しておけば税務調査での説明がぐっと楽になります。

最近は、車の位置や走行距離を自動で記録するテレマティクス(車両管理システム)や、スマートフォンで入力できる運転日報アプリも増えています。手書きで続かない場合は、こうした仕組みを使うと記録漏れを防げます。

社用車の利用規程を作っておく

社用車の使い方を社内規程(車両管理規程)で決めておくと、業務と私用の線引きがはっきりし、税務調査でも会社のルールとして説明できます。

社用車の利用規程で決めておきたい項目
  • 社用車を使える人と使える目的(業務に限る、など)
  • 私用を認めるかどうかと、認める場合の費用負担
  • 通勤や自宅への持ち帰りを認めるかどうか
  • 運転日報の記録方法と提出のタイミング
  • 給油カード・ETCカードの管理方法
  • 事故や違反があったときの報告と費用負担
  • 鍵と車両の保管場所

規程は作るだけでなく、取締役会の承認を得て、社内に周知しておくことが大切です。役員にも同じルールを適用し、規程どおりに運用されている記録を残しましょう。

否認されたときの追徴課税のリスク

税務調査で役員車の費用が否認されると、本来の税金に加えて次のようなペナルティがかかります。

ペナルティ税率の目安かかるケース
過少申告加算税追加で納める税額の10%(一定額を超える部分は15%)申告した所得が少なかったとき
重加算税35%事実を隠したり、帳簿を偽ったりしたとき
延滞税法定納期限の翌日から納付日までの日数に応じて計算納める税金が遅れたとき
不納付加算税源泉所得税の10%役員給与とされた分の源泉徴収が漏れていたとき

さらに、否認された金額が役員給与とされれば、役員個人の所得税・住民税も増えます。これらの加算税や延滞税は、会社の経費(損金)にはなりません。

数年分をまとめて指摘されると、追徴額は想像以上に大きくなります。日ごろから記録を残し、私用と業務をきちんと分けておくことが、いちばんの対策です。

役員車の運転手にかかる費用も経費になる?

役員車では、車の費用に加えて運転手の費用もかかります。運転手を自社で雇う場合と、外部の専門会社に運転業務を委託する場合とで、経費の扱いが変わります。

役員運転手の仕事内容や雇う目的については、お抱え運転手とは?仕事内容や雇うメリット・デメリットでも詳しく解説しています。

運転手を自社で雇う場合は給与として計上

運転手を自社の社員として雇う場合、給料は給料手当、会社が負担する社会保険料は法定福利費として経費になります。求人広告費は採用費(広告宣伝費)、研修費は研修費などで処理します。

費用勘定科目消費税
給与・残業代・賞与給料手当・賞与対象外(不課税)
社会保険料・労働保険料(会社負担分)法定福利費対象外(非課税)
求人広告・紹介手数料採用費/広告宣伝費課税
制服・研修福利厚生費/研修費課税

役員運転手は、役員の予定に合わせて早朝や夜間、休日に働くことが多く、残業代や休日出勤手当がかさみやすい職種です。会社負担の社会保険料は、給与のおおむね15%前後が目安になります。

給与は消費税の対象外なので、消費税の計算では仕入税額控除ができません。この点は、外部に委託する場合との大きな違いです。

運転業務を外部に委託する場合の勘定科目

運転業務を外部の専門会社に委託する場合、毎月の委託料は業務委託費や外注費、支払手数料などの科目で経費にします。科目に決まりはないので、毎期同じ科目で処理を続けましょう。

タイミング借方貸方
毎月の請求書を受け取ったとき業務委託費 500,000円/仮払消費税 50,000円未払金 550,000円
支払時未払金 550,000円普通預金 550,000円

外部への委託料は消費税の課税仕入れになるため、委託先が適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)であれば、支払った消費税を仕入税額控除できます。契約前に、委託先の登録番号を確認しておくと安心です。

委託契約では、運転業務の範囲、運転手が休んだときの代わりの手配、事故が起きたときの責任分担、守秘義務などを契約書で明確にしておきましょう。車両の任意保険で、外部の運転手が運転しても補償される契約になっているかも確認が必要です。

自社雇用と外部委託でトータルの負担を比べる

運転手の費用は、給与や委託料の額だけでなく、採用・教育・代わりの手配・労務管理まで含めたトータルの負担で比べることが大切です。

比較項目自社で雇う外部に委託する
毎月の費用給与+社会保険料+残業代委託料(契約内容で決まる)
採用・教育求人・面接・研修を自社で行う委託先が担う
休んだときの代わり自社で手配するか、役員が自分で運転委託先に代わりの運転手を頼める
労務管理勤怠・残業・有給の管理が必要委託先が担う
消費税仕入税額控除できないインボイスがあれば控除できる
柔軟さ人数を減らしたいときに調整しにくい利用日数や時間で調整しやすい

自社で雇えば運転手を自分たちで選べる一方、採用や教育に時間がかかり、運転手が辞めたり休んだりしたときの影響が大きくなります。外部に委託すれば、毎月の費用は見積もりしだいですが、採用や代わりの手配の手間がなくなります。

役員運転手を雇った場合の月額費用の目安は、専属運転手を個人契約するには月いくら?雇うメリット・デメリットで詳しくまとめています。外部の会社の料金やサービスを比べたい方は、東京で役員運転手を任せられる会社の比較も参考にしてください。

運転手付きにすると業務利用の説明がしやすくなる

役員車に運転手を付けると、税務の面でもメリットがあります。運転手が出発・帰着の時刻、行き先、走行距離を毎回記録するため、運転日報が自然にそろい、業務で使ったことを説明しやすくなるからです。

役員が自分で運転していると、忙しさから記録が後回しになりがちです。運転手が業務として記録をつければ、記録漏れが減り、休日や夜間の私的利用も起きにくくなります。

ただし、運転手付きでも、役員の家族の送迎や私的な外出に運転手と車を使えば、その分は私的利用です。運転手の勤務時間を私用に使った場合は、運転手の人件費や委託料の一部も役員給与とみなされるおそれがあるため、業務の範囲を事前に決めておきましょう。

社用車の経費に関するよくある質問

社用車の経費について、よくある質問をまとめました。

社用車のガソリン代は全額経費にできる?

業務だけに使っている社用車なら、ガソリン代は全額経費にできます。

役員や従業員が私用でも使っている場合は、私用分を本人に負担してもらうか、役員・従業員への給与として処理します。私用の割合は運転日報の走行距離から計算するのが一般的です。給油カードの明細と運転日報を照らし合わせて、休日の給油などがないか定期的に確認しておきましょう。

社用車で通勤している場合も経費になる?

社用車での通勤を会社が認めている場合、通勤にかかるガソリン代なども会社の経費として処理するのが一般的です。直行直帰が多い営業職や、早朝・深夜に役員を送迎する運転手が社用車で通勤するのは、業務上の理由があると説明しやすいケースです。

ただし、社用車で通勤している人にさらに通勤手当を払うと二重払いになるため、通勤手当は支給しないのが基本です。また、通勤の途中に私用で寄り道をしたり、休日にも乗ったりしていれば、その分は私的利用になります。社用車での通勤を認めるかどうかは、利用規程で決めておきましょう。

社用車の駐車違反の反則金は経費にできる?

交通違反の反則金は、会社の経費にはできません。国税庁の法人税基本通達では、業務中の違反の反則金を会社が負担した場合は損金にならず、業務と関係のない違反なら役員・従業員への給与になるとされています(国税庁「法人税基本通達 第6款 罰科金」)。

運転者が出頭しなかったときに車の使用者(会社)に課される放置違反金も、経費にはしないで処理するのが安全です。扱いに迷う場合は顧問税理士に確認してください。違反は運転者本人に負担してもらうルールを規程に入れておくと、管理がしやすくなります。なお、レッカー移動費用や保管料は、反則金とは別のものとして経費にできるとする考え方が一般的です。

個人事業主の車は家事按分が必要?

個人事業主が1台の車を仕事と私用の両方に使う場合は、仕事に使った割合だけを必要経費にする「家事按分」が必要です。

按分の割合は、走行距離や使った日数など、合理的に説明できる基準で決めます。たとえば、年間の走行距離1万kmのうち仕事が6,000kmなら、ガソリン代や減価償却費などの60%を必要経費にします。国税庁も、家事関連費のうち業務に必要な部分を明らかに区分できる場合に限り必要経費にできるとしています(国税庁「必要経費の知識」)。

法人の場合は、私用分を役員給与として扱うか本人に負担させるのに対し、個人事業主は私用分を経費に含めないという違いがあります。

高級車を社用車にすると節税になる?

高級車を買っても、税金そのものが減るとは限りません。減価償却で経費になるのを前倒しにしているだけで、車を売ったときに帳簿価額より高く売れれば、その差額が売却益として課税されます。

とくに4年落ちの中古高級車は、1〜2年で帳簿価額がほぼゼロになるため、売却すると売却額のほとんどが利益になります。利益が出る時期をずらす課税の繰延べにはなりますが、車の購入で現金も出ていきます。

業務に必要な車を、資金繰りに無理のない範囲で選ぶのが基本です。節税だけを目的にした購入は、税務調査で業務との関連を問われる原因にもなります。

社用車を売却したときの処理はどうする?

社用車を売却したときは、売却額と帳簿価額(減価償却後の残り)の差額を固定資産売却益または固定資産売却損として計上します。法人が事業用の資産を売る場合、売却額は消費税の課税対象になる点にも注意しましょう。

ケース借方貸方
帳簿価額50万円の車を110万円(税込)で売却普通預金 1,100,000円車両運搬具 500,000円/固定資産売却益 500,000円/仮受消費税 100,000円

新しい車を買うときに古い車を下取りに出した場合も、「古い車の売却」と「新しい車の購入」の2つの取引に分けて仕訳します。下取り額を差し引いた金額だけで新しい車を計上すると、取得価額が小さくなり、減価償却や売却益の計算がずれてしまいます。リサイクル預託金も、売却時に精算することを忘れないようにしましょう。

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